化粧品の販売チャネルを整理|市場推移から考える物流の役割

化粧品の販売チャネルは、近年大きく変化しています。
ドラッグストア中心だった時代から、百貨店、訪問販売、EC、コンビニ、量販店、コスメセレクトショップへと選択肢が広がり、企業には複数チャネルを前提とした戦略が求められるようになりました。
化粧品の販売チャネルを考えるうえでは、市場規模の推移とチャネル別の動きをあわせて理解することが欠かせません。
本記事では、主要な販売チャネルの特徴と推移を解説し、現在の販売環境を読み解いていきます。
化粧品の国内市場の推移
まずは化粧品自体の国内推移を見ていきましょう。
市場規模の理解は、販売チャネルを考えるうえで重要な情報です。
需要を理解して販売チャネルを検討することで、より精度の高い戦略を練ることができます。
以下は『矢野経済研究所』が2025年に発表した化粧品市場の調査データです。
【国内の化粧品市場規模推移】
- 2020年…2兆2,350億円
- 2021年…2兆2,900億円
- 2022年…2兆3,700億円
- 2023年…2兆4,780億円
- 2024年…2兆5,800億円
- 2025年(予測)…2兆6,500億円
(参照元:化粧品市場に関する調査を実施(2025年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所)
上記のように、化粧品の市場は拡大傾向にあります。
要因としては以下の2つが考えられます。
- コロナ禍の収束によるショッピング需要の増加
- インバウンド需要の増加
これらのことから、販売チャネルは一つに絞るのではなく需要に応じて使い分けることが重要だといえます。
化粧品の主な販売チャネル一覧

化粧品の販売チャネルは多様になってきています。
従来はドラッグストアがメインでしたが、昨今ではECやコンビニでも販売されるようになりました。
以下では、現在の主要な販売チャネルの特徴について解説していきます。
ドラッグストア
ドラッグストアは、化粧品を日常的に購入してもらいやすい販売チャネルです。
スキンケアやベースメイクは消耗品として補充目的で選ばれやすく、棚で比較しながら購入されます。
一方で、価格競争が起きやすく、売り場で十分な説明はできません。
回転率と認知拡大を重視した商品展開が求められます。
百貨店
百貨店は、高価格帯やブランド価値を重視する化粧品に向いた販売チャネルです。
美容部員による対面接客があり、使用方法や肌悩みを相談しながら購入できます。
実際にテスターで色味や質感を確認できる点も安心材料の一つ。
一方で、出店コストや人件費が高く、販売数量を伸ばすには限界があります。
訪問販売
訪問販売は、顧客一人ひとりに合わせた提案ができる販売方法です。
使用環境や悩みを直接聞きながら説明できます。
ただし、人に依存する側面が強く、新規顧客の獲得や拡大には時間がかかります。
EC
ECは、時間や場所を選ばず購入できる利便性が強みです。
店舗に行かなくても商品情報を比較し、注文まで完結できます。
定期購入やリピート販売にも向いており、売上を安定させやすい特徴があります。
一方で、色味や香りを試せない不安があり、初回購入のハードルは高いです。
情報の分かりやすさと配送品質が成果を左右します。
コンビニ
コンビニは、気軽に購入できる点が最大の特徴です。
ミニサイズや使い切り商品が多く、試し買いとの相性が良い傾向があります。
ただし、陳列スペースが限られ、商品説明も十分にできません。
低価格帯やサブ用途の商品に向いたチャネルです。
量販店
量販店は、幅広い商品を比較しながら購入できる販売チャネルです。
価格帯やブランドの選択肢が多く、まとめ買いしやすいです。
一方で価格競争になりやすく、ブランド価値を伝えにくい側面があります。
コスメセレクトショップ
コスメセレクトショップは、編集された商品ラインナップが特徴です。
独自の視点で商品が選ばれており、新しい化粧品との出会いが生まれやすい場所でもあります。
トレンド感や世界観を重視する顧客に支持されやすく、ブランド理解を深めやすい環境です。
販売チャネル別の化粧品国内市場の推移

化粧品市場の推移・主な販売チャネルを理解したうえで、今度は販売チャネル別の推移を見ていきましょう。
販売チャネル別の推移を見ることで、現在の需要が明らかになります。
なお、以下で紹介するデータは『富士経済グループ』がプレスリリースとして発表したものとなります。
※参照元:国内の化粧品市場を販売チャネル別に調査 | プレスリリース | 富士経済グループ
なお、調査データは2020年当時の内容です。
ドラッグストアの推移予測
- 2019年…1兆6,387億円
- 2018年比…104.6%
- 2020年見込み…1兆5,776億円
- 2019年比…96.3%
当時の市場分析では、ドラッグストアは2019年まで拡大傾向にあるとされていました。
免税化以降、訪日客や代理購入の増加が成長を支えていたためです。
一方で、2020年は感染症拡大の影響により化粧品需要が鈍化し、市場は縮小に向かうと予測されていました。
百貨店
- 2019年…5,655億円
- 2018年比…102.0%
- 2020年見込み…4,400億円
- 2019年比…77.8%
百貨店チャネルは、2019年までは高価格帯化粧品とインバウンド需要により堅調と見られていました。
ただし当時の予測では、消費税増税や購買行動の変化により成長は鈍化すると予想。
2020年については、来店制限や対面販売の影響で大幅な市場縮小が想定されていました。
訪問販売の推移予測
- 2019年…4,742億円
- 2018年比…98.6%
- 2020年見込み…4,160億円
- 2019年比…87.7%
訪問販売は、2017年のヒット商品を契機に一時的な回復が見られたものの、当時の分析では長期的には縮小傾向と位置づけられていました。
2019年は中価格帯商品の不振が影響し、2020年は対面営業の制約により市場規模が大きく落ち込むと予測されていました。
ECの推移予測
- 2019年…3,807億円
- 2018年比…102.1%
- 2020年見込み…3,845億円
- 2019年比…101.0%
ECは、他チャネルと比べて安定成長が続くと見られていました。
メーカー直販の強化や新規参入が進んでいたためです。
2019年は一部大手が伸び悩んだものの、新興ブランドが市場を下支えしました。
2020年については、店舗需要の一部が流入し、微増にとどまるとの見方が示されていました。
量販店の推移予測
- 2019年…3,490億円
- 2018年比…99.3%
- 2020年見込み…3,344億円
- 2019年比…95.8%
量販店は、2014年以降縮小が続くチャネルとされていました。
2019年は消費税増税前の動きにより下げ幅は限定的でしたが、当時の予測では、2020年は化粧品需要の低下により再び減少すると見込まれていました。
コスメセレクトショップの推移予測
- 2019年…261億円
- 2018年比…110.6%
- 2020年見込み…223億円
- 2019年比…85.4%
コスメセレクトショップは、2019年時点では成長チャネルとして注目されていました。
新規出店や若年層の支持が背景です。
ただし当時の見通しでは、2020年は都市部店舗の営業制限などにより、市場規模は一時的に縮小すると予測されていました。
販売チャネルの多様化により化粧品の物流要件は複雑化している
販売チャネルの多様化により、化粧品の物流に求められる要件は年々複雑になっています。
ドラッグストア、百貨店、訪問販売、ECなど、チャネルごとに納品形態や出荷条件が異なるためです。
たとえば店舗向けでは一括納品や什器対応が求められ、販促時にはセット組みやラベル貼付が発生します。
一方で、チャネル横断で在庫を管理する必要もあり、ロット管理や使用期限管理の重要性も高まります。
市場拡大とチャネル分散が進むほど、物流は単なる保管や配送ではなく、販売を支える業務領域へと役割が変化しています。
そのため、自社での対応は、今後ますます難しくなります。
多様化するチャネルに対応するためには、アウトソーシングも検討する必要があります。