医薬品物流の課題。品質管理・温度管理・2024年問題

医薬品物流では、一般的な商品物流以上に慎重な管理が求められます。
医薬品は人の健康や生命に関わるため、保管や輸送の過程で品質が損なわれると、大きな問題につながる可能性があるためです。
この記事では、課題に対応するための改善策を解説します。
医薬品物流で発生しやすい主な課題
医薬品物流では、品質管理や温度管理だけでなく、配送遅延、物流コスト、誤配送、返品・回収対応など、さまざまな課題が発生します。
特に医薬品は医療現場への供給に関わるため、物流上のトラブルが大きな影響につながる可能性があります。
温度逸脱による品質低下リスク
医薬品の中には、一定の温度帯で保管・輸送しなければならないものがあります。
輸送中に温度が上がったり、積み替え時に管理が途切れたりすると、品質低下につながる恐れがあるためです。
温度逸脱が発生した場合、その医薬品を使用できるかどうかを確認しなければなりません。
判断に時間がかかれば、出荷遅延や在庫不足にもつながります。
温度管理が必要な医薬品では、保管場所、輸送手段、記録方法まで含めた管理体制が必要です。
配送遅延やリードタイム延長
物流2024年問題により、医薬品物流でも配送リードタイムの延長が課題になっています。
ドライバーの労働時間規制により、従来と同じ配送頻度や納品時間を維持しにくくなる可能性があるためです。
厚生労働省の資料でも、医薬品業界への影響として、物流リードタイムの延長や納品タイミングの柔軟性低下が示されています。(※厚生労働省 医薬品業界における物流2024年問題関連資料)
医薬品は医療機関や薬局で必要とされるため、配送遅延が供給不安につながる場合があります。
物流コストの上昇
医薬品物流では、物流コストの上昇も課題です。
ドライバー不足に伴う人件費の上昇、燃料費の高騰、温度管理設備の維持費、保管費などが負担になります。
厚生労働省の物流2024年問題関連資料でも、物流コストの上昇が医薬品業界への影響として挙げられています。(※厚生労働省 医薬品業界における物流2024年問題関連資料)
医薬品物流では品質管理を簡略化しにくいため、単純なコスト削減だけでは対応できません。
配送頻度や在庫配置、委託先との連携を見直す必要があります。
誤配送や取り違えを防ぐ管理体制
医薬品には、名称が似ているものや、規格・容量・包装単位が異なるものがあります。
そのため、誤配送や取り違えを防ぐ管理体制が必要です。
誤った医薬品が出荷されると、返品や再配送だけでなく、医療現場での使用にも影響する可能性があります。
品番、ロット、使用期限、保管条件を正確に管理し、ピッキングや検品時に確認できる仕組みを整えることが求められます。
返品・回収への対応が複雑になる
医薬品物流では、返品や回収への対応も複雑です。
返品された医薬品を再び流通させられるかどうかは、保管状態や温度管理、開封状況などを確認したうえで判断する必要があります。
また、回収が発生した場合は、対象ロットがどこへ出荷されたのかを特定しなければなりません。
出荷先や在庫状況を追跡できる記録管理がないと、対応が遅れる可能性があります。
供給不足や限定出荷への対応が必要になる
医薬品物流では、供給不足や限定出荷への対応も課題です。
厚生労働省は、医薬品の限定出荷や供給停止に関する情報を公表しています。(※厚生労働省 医薬品供給状況に関する情報)
供給が不安定な医薬品では、在庫管理や配送調整の精度がより求められます。
医薬品の供給不足は、単なる在庫切れではなく、医療現場や患者に影響する可能性があります。
物流面でも、必要な医薬品を必要な場所へ優先的に届けるための管理が必要です。
医薬品物流の課題に対応するための改善策

医薬品物流の課題に対応するには、配送方法だけでなく、保管、在庫管理、記録管理、委託先との連携まで見直す必要があります。
物流2024年問題や供給不足を踏まえると、従来の運用を続けるだけでは対応が難しくなる場面もあります。
温度管理体制を見直す
温度管理が必要な医薬品では、倉庫内だけでなく輸送中の温度も確認する必要があります。
温度ロガーの活用、温度記録の保管、冷蔵・定温設備の点検などを行い、温度逸脱を防ぐ体制を整えましょう。
また、積み替え時や一時保管時に温度管理が途切れないかも確認が必要です。
保管から配送まで一貫して温度を管理できる仕組みが、医薬品物流の品質維持につながります。
ロット・使用期限・在庫情報を一元管理する
医薬品物流では、ロット番号、使用期限、入出庫履歴、出荷先情報を一元管理することが必要です。
これらを正確に管理できれば、誤出荷や期限切れ、回収時の確認漏れを防げます。
特に使用期限がある医薬品では、先入れ先出しや期限の近いものから出荷する運用が求められます。
システムで在庫情報を管理することで、在庫差異や期限管理のミスを減らせます。
配送頻度や納品条件を見直す
物流2024年問題への対応として、少量多頻度配送の見直しも必要です。
厚生労働省の資料でも、配送頻度の見直しやケース単位での発注などが課題対応として示されています。(※厚生労働省 医薬品業界における物流2024年問題関連資料)
- これまで毎日配送していたものをまとめて納品する
- 発注単位を見直す
- 納品時間の指定を緩和する
など、荷主側と物流側の調整が求められます。
医薬品物流では、供給安定性を保ちながら配送効率を高めることが課題です。
共同配送や拠点集約を検討する
共同配送や拠点集約も、医薬品物流の改善策になります。
同じ方面への配送をまとめたり、物流拠点を見直したりすることで、輸送効率を高められます。
ただし、医薬品物流では効率化だけを優先することはできません。
温度管理、ロット管理、納品時間、緊急対応などを踏まえたうえで、共同配送や拠点集約が可能かを検討しましょう。
医薬品物流に対応できる委託先を選ぶ
医薬品物流に対応するには、一般的な保管・発送だけでは不十分です。
GDP対応、温度管理、記録管理、返品・回収対応、緊急時の連絡体制などを確認したうえで、委託先を選ぶ必要があります。
特に、冷蔵・定温管理が必要な医薬品や、ロット管理が求められる商品を扱う場合は、実績や管理体制の確認が欠かせません。
委託先を選ぶ際は、価格だけでなく、医薬品を安全に扱える体制があるかを見ておきましょう。
医薬品を安全に届けるには物流体制の見直しが欠かせない
医薬品物流の課題は、配送効率や物流コストだけではありません。
- 品質管理
- 温度管理
- GDP対応
- トレーサビリティ
- 返品・回収
- 供給安定性
まで含めて考える必要があります。
さらに、配送頻度や納品条件、在庫管理、委託先の体制を見直し、医薬品を安全かつ安定して届けられる物流体制を整えることが必要です。
医薬品は、遅れずに届けばよい商品ではありません。
適切な品質を保ったまま、必要な場所へ安定して届けることが求められます。
そのためにも、自社の物流体制にどのような課題があるのかを把握し、改善できる部分から見直していきましょう。